○大峯奥駈道の歴史的景観及び文化的景観を保全するための黒滝村条例

平成14年7月10日

条例第32号

(目的)

第1条 この条例は、豊かな自然と人間の営みが一体となつて形成された大峯奥駈道に関係する歴史的並びに文化的な景観及び環境を保全し、広く村民が歴史的並びに文化的な景観及び環境の恵沢を享受するとともに、将来の村民にこれを継承できるようにし、もつて現在及び将来の村民の文化的生活に寄与することを目的とする。

(用語の定義)

第2条 この条例において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これに類する施設をいい建築設備を含むものとする。

(2) 建築設備 建築物における電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の施設又は煙突、昇降機、若しくは避雷針をいう。

(3) 仮設建築物 建築基準法(昭和25年法律第201号)第85条第1項から第4項に規定する仮設建築物又は建築から除却までの期間が1年以内の建築物をいう。

(村及び村民の責務)

第3条 村及び村民は、第1条に規定する歴史的及び文化的な景観並びに環境の保全に努めなければならない。

(財産権の尊重及び他の公益との調整)

第4条 第1条に規定する歴史的並びに文化的な景観及び環境の保全にあたつては、関係者の所有権その他の財産権を尊重するとともに、地域経済の発展その他の公益との調整に配慮しなければならない。

(指定)

第5条 村長は、黒滝村文化財保護条例(昭和60年黒滝村条例第14号)第4条による黒滝村文化財保護委員会(以下「委員会」という。)の意見を聴き、歴史的景観保全区域を指定する。

2 村長は、歴史的環境保全区域を指定する場合には、その旨及びその区域を公報で公示しなければならない。

3 歴史的環境保全区域の指定は、前項の公示によつてその効力を生ずる。

(指定の解除及び区域の変更)

第6条 村長は、歴史的景観保全区域の指定を解除し、またはその区域を変更しようとするときは、委員会の意見を聴かなければならない。

(許可を要する行為)

第7条 歴史的景観保全地区内において、次の各号に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ規則で定めるところにより、村長の許可を受けなければならない。許可を受けた事項を変更しようとする場合においても、また、同様とする。

(1) 建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の新築、改築、増築又は移転

(2) 宅地の造成、土地の開墾その他の土地の区画形質の変更

(3) 木竹の伐採

(4) 土石の類の採取

(5) 水面の埋立て、干拓

(6) 建築物等の色彩の変更

2 前項の規定にかかわらず、同項各号に該当する行為で次の各号に掲げるものについては、同項の許可を要しない。この場合において、これらの行為をしようとする者は、あらかじめ、村長にその旨を通知しなければならない。

(1) 森林法(昭和26年法律第249号)第10条の2第1項の規定により、地域森林計画の対象となつている民有林における開発行為の許可を受けた行為又は同条同項但書の規定により許可を要しない行為及び第10条の8第1項の規定により、森林所有者等が実施する地域森林計画の対象となつている民有林の伐採であつて、予め同条同項の規定による届出のなされた行為又は同条同項但書きの規定により届出を要しない行為若しくは第10条の3第1項による命令に基づく行為

(2) 森林法第25条第1項及び第25条の2第1項の規定により指定された保安林において、第34条第1項及び第2項(保安林における立木の伐採等の許可)による許可を受けた行為又は同条同項但書きの規定により許可を要しない行為。又は第34条の2第1項(保安林における間伐の届出)による届出のあつた行為及び第10条の10第1項の規定による勧告に基づく間伐若しくは第38条第1項第2項第3項による命令に基づく行為

(3) 文化財保護法(昭和25年法律第214号)第43条第1項、第80条第1項並びに第99条第1項第2号の規定による許可を受けた行為及び第43条第1項但書並びに第80条第1項但書の規定により許可を要しない行為及び第56条の2の7の規定による届出のあつた行為及び第45条第1項並びに第81条第1項の規定により設置する施設若しくは第80条第7項による命令に基づく行為

(4) 奈良県文化財保護条例(昭和52年奈良県条例第26号)第18条第1項並びに第45条第1項の規定により許可を受けた行為及び第185条第1項但書並びに第45条第1項但書の規定により許可を要しない行為

(5) 黒滝村文化財保護条例(昭和60年黒滝村条例第14号)第13条の規定により許可を受けた行為。

3 国又は県若しくは村の機関(次の各号に掲げる公社等を含む。)が行う行為については、第1項の許可を受けることを要しない。この場合において、当該国、県又は村の機関は、その行為をしようとするときは、あらかじめ、村長に協議しなければならない。協議した事項を変更しようとする場合にも同様とする。

(1) 奈良県土地開発公社

(2) 奈良県住宅供給公社

(3) 奈良県道路公社

(4) 地方公営企業法(昭和27年法律第291号)第4の規定に基づき制定された村条例に基づく地方公営企業(黒滝村簡易水道)

(許可基準)

第8条 村長は、第7条第1項各号に掲げる行為で次の各号に定める基準に適合しないものについては、同項の許可をしてはならない。

(1) 建築物(仮設の建築物を除く)及び工作物(仮設の工作物を除く)の新築、改築、増築並びに移転(以下「新築等」という。)にあたつては、当該建築物の位置、規模、形態及び意匠が、新築等の行なわれる土地及びその周辺の土地における歴史的環境及び文化的な景観と著しく不調和でないこと。

(2) 仮設の建築物等の新築等については、次に掲げる要件に該当すること。

 当該建築物等の構造が、容易に移転し、又は除却することが出きるものであること。

 当該建築物等の位置、規模、形態及び意匠が、新築の行なわれる土地及び周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でないこと。

(3) 宅地の造成、土地の開墾その他土地の区画形質の変更については、次に掲げる要件に該当し、かつ周辺の歴史的及び文化的な景観の保全に影響が少ないこと。

 土地の区画形質の変更後の土地について植栽その他必要な措置を行うこと等により、変更後の地貌が変更を行う土地及びその周辺の土地の区域における歴史的及び文化的な景観と著しく不調和とならず、かつ変更を行う土地の区域における木竹の生育に支障を及ぼすおそれが少ないこと。

 高さが、4メートルを超える法〈のり〉を生ずる切土又は盛土を伴わないこと。

(4) 木竹の伐採については、木竹の伐採が次のいずれかに該当し、かつ伐採の行なわれる土地及びその周辺の土地の区域における歴史的及び文化的な景観を損なわないこと。

 第7条第1項第1号及び第2号に掲げる行為をするために必要な最小限度の木竹の伐採

 森林の択伐

 森林の区域外における木竹の伐採

(5) 土石の類の採取については、採取の方法が、露天掘り(必要な埋め戻し又は植栽をすること等により歴史的及び文化的な景観の保全に著しい支障を及ぼさない場合を除く)でなく、かつ採取を行う土地及びその周辺の土地の区域における歴史的及び文化的景観の保全に著しい不調和とならないこと。

(6) 水面の埋立て又は干拓については、水面の埋立て又は干拓後の地貌が埋立て又は干拓を行う土地及びその周辺の土地の区域における歴史的及び文化的な景観と不調和とならないこと。

(7) 建築物等の色彩の変更については、変更後の色彩が変更の行なわれる土地及びその周辺の土地の区域における歴史的及び文化的な景観と著しい不調和とならないこと。

2 第7条第1項の許可には、歴史的及び文化的な景観の保全のため必要な条件を附することができる。この条件は、当該許可を受けた者に不当な義務を課するものであつてはならない。

(地位の承継)

第9条 第7条第1項の許可を受けた者の相続人その他の一般承継人は、被承継人が有していた当該許可に基づく地位を承継する。この場合において、相続人その他の一般承継人は、その旨を届出なければならない。

2 第7条第1項の許可を受けた者から当該許可を受けた行為を行う権限を取得した者は村長の承認を受けて、当該許可を受けた者が有していた当該許可に基づく地位を承継することができる。

(勧告)

第10条 村長は、次の各号の一に該当する者に対して、第1条に掲げる目的を達成するため建築物等の改築、移転若しくは除却その他違反行為を是正するため必要な措置をとることを勧告することができる。

(1) この条例の規定又はこれに基づく処分に違反した者

(2) この条例の規定又はこれに基づく処分に違反した工事の注文主若しくは請負人(請負工事の下請人を含む。)又は請負契約によらないでみずからその工事をしている者若しくはした者

(3) 第8条第2項の規定により許可に附せられた条件に違反している者

(4) 詐欺その他不正な手段によつて第7条第1項の規定による許可を受けたもの

(監督処分)

第11条 村長は、前条各号の一に該当する者に対して、第1条に掲げる目的を達成するため必要な限度において、この条例の規定による許可を取り消し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を附し、又は工事その他の行為を命じ、若しくは相当の期限を定めて建築物等の改築、移転若しくは除却その他違反行為を是正するため必要な措置をとることを命ずることができる。

(報告又は資料の提出)

第12条 村長は、前条の規定による権限を行うために必要な限度において、第7条第1項各号に掲げられた行為を行つた者若しくは行つている者又は当該行為の請負人に対し、当該行為の実施状況その他必要な事項について報告又は資料の提出を求めることができる。

(立ち入り検査)

第13条 村長又はその命じた者若しくは委任した者は、第11条の規定による権限を行うため必要があるときは、当該土地に立ち入り、当該土地若しくは当該土地にある建築物及び工作物等又は当該土地において行なわれている工事の状況を検査させることができる。

2 前項の規定により他人の土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯しなければならない。

3 前項に規定する証明書は、関係人の請求があつたときには、これを呈示しなければならない。

(罰則)

第14条 第11条の規定による村長の命令に違反した者は、五万円以下の罰金に処する。

第15条 次の各号に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。

(1) 第7条第1項の規定に違反した者

(2) 第8条第2項の規定により許可に付された条件に違反した者

第16条 次の各号に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。

(1) 第12条の規定による報告又は資料の提出を求められて、報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者

(2) 第13条第1項の規定による立ち入り検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

(法人若しくは使用者の責任)

第17条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して前3条に規定する違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を課する。

(施行期日)

この条例は、平成14年9月1日から施行する。

大峯奥駈道の歴史的景観及び文化的景観を保全するための黒滝村条例

平成14年7月10日 条例第32号

(平成14年9月1日施行)