○火災原因調査規程

昭和24年5月2日

規程第5号

第1章 総則

第1条 火災原因調査員(以下「調査員」という。)がその職務を行うには消防法、刑法、刑事訴訟法、日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律等の必要な条項を遵守する外この規定によらなければならない。

第2条 火災原因の調査は、凡ての火災事件の原因を調査して火災予防及び消防施策決定の根本資料を得るを目的とする。

第2章 調査員の心得

第3条 調査員は世評に動かされず、私情に惑わされず主として科学的方法による調査の万全を期さなければならない。

第4条 調査員は、平素から社会の変遷人心の趨向に留意し火災に関する諸般の現象を攻究して原因調査について遺憾のないことを期さなければならない。

第5条 火災原因調査をするについて敏活に、且機宜を失わず周密に遺漏のないことを期さなければならない。

第6条 火災原因調査をするについては、調査上知り得た秘密を厳守して火元責任者その他の関係者の名誉を毀損しない様に注意しなければならない。

第7条 調査は穏健妥当な方法によつてこれを行い、火元責任者其の他の関係者の煩累を少なくすることに注意しなければならない。火元責任者その他の関係者の呼出尋問は、なるべく夜間において行うことを避けなければならない。

第8条 調査については、みだりに火元責任者その他の関係者の穏微をあばくことのないようにしなければならない。

第9条 調査をするに当つては、みだりに人心を動揺せしめないように注意しなければならない。

第10条 調査は原因調査上必要な事項に限ることとし、みだりに民事問題に干与してはならない。

第11条 調査員は、互に連絡協調を伴う共同一致の精神を以て、調査に従わなければならない。

第12条 火災原因調査は、その目的を達するために必要な「調査」義務を行うのであつて「捜査」義務を行うのでないことに留意しなければならない。

第3章 調査の実行

第1節 通則

第13条 調査員は、管内に火災が発生した場合は、直ちにその原因を調査しなければならない。

第14条 出火原因の判定上不審あるもの又は原因不明の火災については、村長に報告しなければならない。

第15条 火災原因調査に当つては、火災現場における発火物、燃焼物等の物的判定資料を得るように努めなければならない。

第2節 通報

第16条 調査によつて放火又は失火の犯罪があると認められたるときは、重要なものについては、発火日時、発火場所、火元責任者の住所、職業、氏名、発火原因、焼失程度を所轄警察署長に通報しなければならない。

第17条 前条の場合において警察吏員が捜査を行うに至つたときは、必要な援助をしなければならない。

第3節 立入検査

第18条 火災原因及び損害調査のため必要ある場合は、関係場所に立入つて検査をすることができる。

第19条 関係場所に立入つて検査をする場合は、証票を携帯してこれを火元責任者その他の関係者に呈示しなければならない。

第20条 立入検査は緊急の場合を除く外、関係者の立会の上で実施しなければならない。

第21条 個人住宅の立入検査をする場合は、関係者にその旨をつげて承諾を得た上で実施する様にしなければならない。

第22条 立入検査の対象は、「防火対象物の位置構造設備完理の状況」に限ること。

第4節 現場保存

第23条 火災現場は、警察吏員に引渡すまでは縄張りを施し、監視員1名乃至2名を配置して保存して置かねばならない。

第24条 火災現場には一般人を立入らせてはならない。

第25条 出火点、発火点、燃焼過程等原因判定上重要な個所については、その部位に白墨その他のものを以て目印を施し他のものが接触してこれを滅失しないようにしなければならない。

第26条 火災現場は、これをでき得れば写真撮影することができる。

第27条 火災現場は、常に之を監視しなければならない。

第5節 証拠保全

第28条 調査員は、火災原因調査上必要な証拠を蒐集して、その保全に努めなければならない。現場に存置しておいては移動又は紛失の虞れある物は、これを役場に引揚げて保存しなければならない。

第29条 発火物又は犯人の遺留品と認め得る物件若しくは焼跡の残滓物で原因判定上重要なものは、その原型を壌さないように保存しなければならない。

第30条 証拠物件であつて日光、雨雪圧等によつて毀損壊滅の虞れのあるものは適当な保全方法を講じなければならない。

第31条 採取した証拠物件は、証拠品台帳に登載する外、各物件に番号年月日及び被採集者の住所、職業、氏名、年令、採集理由等を記載してこれを保存しなければならない。

第32条 前条の証拠物件を警察署長より引渡しの要求があるときは、領収証を徴して引渡さなければならない。証拠物件を任意に提出せしめた場合は、必ず提出者より権利抛棄書を提出せしめ置かねばならない。

第6節 原因調査

第33条 調査員は、5官の全作用により火災現場の実況を見分けして、火災原因を調査しなければならない。

第34条 火災原因は、先づ現場に入つて出火家屋、出火点、発火物、発火時刻、燃焼過程等を科学的方法によつて確定して後に、合理的に決定するようにしなければならない。

第35条 原因調査は、人的調査と物的調査を併用しなければならないが特に原因の決定する場合は、これを立証する物的証拠を必要とする。

第36条 火気取扱者、火元責任者その他の関係者については、出火前後の状況を詳細に聴取して、これを警察官の捜査資料に供しなければならない。

第37条 火災現場に先着した消防隊長から、火災状況報告書を徴しなければならない。

第38条 電気危険物その他特殊火災の原因決定については、学識経験ある専門家に依頼することができる。

第39条 調査のために火元責任者その他の関係者の陳述を求める場合には、任意陳述によらなければならない。

火災原因調査規程

昭和24年5月2日 規程第5号

(昭和24年5月2日施行)